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神戸地方裁判所 昭和44年(わ)1492号 判決

本店所在地

神戸市灘区岩屋北町五丁目一番一四号

丸永梱包株式会社

右会社代表者代表取締役

永安秀男

本籍

芦屋市山手町一番地

住居

同右

会社役員

永安秀男

大正九年五月五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官小野哲公判に出席のうえ、審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金五〇〇万円に、被告人永安秀男を懲役五月に

処する。

ただし、被告人永安秀男に対し、この裁判確定の日から一年

間右刑の執行を猶予する。

理由

一、罪となるべき事実

被告会社は、神戸市灘区岩屋北町五丁目一番一四号に本店を置き梱包業等を営業目的とするもの、被告人永安秀男は被告会社の代表取締役社長であって、その業務全般を掌理しているものであるが、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、昭和四〇年一〇月一日から昭和四一年九月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額は二二、八〇四、六五九円で、これに対する法人税額は七、八四一、〇〇〇円であつたのにかかわらず、架空の材料仕入費および外注加工費を計上し、架空名義の預金とする等の不正の方法による所得を秘匿したうえ、昭和四一年一一月三〇日、所轄灘税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、八六八、六七五円でこれに対する法人税額が一、〇二四、三三〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もつて偽りその他不正の行為により正当税額との差額六、八一六、六七〇円をほ脱し、

第二、昭和四一年一〇月一日から昭和四二年九月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額は一五、〇六九、五七三円で、これに対する法人税額は四、八一六、一〇〇円であつたのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四二年一一月二九日、所轄灘税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七、二二七、一一五円でこれに対する法人税額が二、〇七一、四〇〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もつて偽りその他不正の行為により正当税額との差額二、七四四、七〇〇円をほ脱し、

第三、昭和四二年一〇月一日から昭和四三年九月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額は七四、二二五、二八八円で、これに対する法人税額は二五、四三八、三〇〇円であつたのにかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四三年一一月二九日、所轄灘税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二九、四三六、六四〇円でこれに対する法人税額が九、七六二、二四〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もつて偽りその他不正の行為により正当税額との差額一五、六七六、〇六〇円をほ脱し、

たものである。

二、証拠

一、被告人永安秀男の当公判廷における供述

一、同被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通および検察官に対する供述調書三通並びに同被告人作成の上申書二通

一、被告会社の法人登記簿謄本および定款写

一、大蔵事務官寺野久夫作成の証明書添付の被告会社の昭和四一年一一月三〇日申告、昭和四二年一一月二九日申告、昭和四三年一一月二九日申告の各法人税確定申告書および附属書類の写

一、大蔵事務官久米敏幸作成の脱税額計算書三通並びに脱税額計算書説明資料三通

一、谷内雄次の大蔵事務官に対する質問てん末書四通並びに検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官久米敏幸作成の簿外棚卸に関する調査てん末書

一、竹本季雄の大蔵事務官に対する質問てん末書五通並びに検察官に対する供述調書

一、三門和夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(同人作成の確認書を含む)

一、桑原信義、浜田吾一の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、小川具子の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、松井杢次の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官久米敏幸作成の架空仕入および支払手数料に関する調査てん末書、架空外注費および架空労務費、架空修繕費、架空雑費に関する調査てん末書および架空役員報酬に関する調査てん末書

一、岡本章の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに検察官に対する供述調書二通

一、高木芳雄の検察官に対する供述調書(判示第一の事実のみにつき)

一、杉本多平の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに検察官に対する供述調書

一、鍛治忠一郎の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、稲葉悦一の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書

一、駒井義一の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、大西一一の検察官に対する供述調書

一、島田博行の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官西脇勇外二名の作成の調査てん末書

一、横山さよ子、小山秋子、有本雅行の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大蔵事務官久米敏幸作成の売上除外に関する調査てん末書(判示第三につき)

一、大倉邦雄の大蔵事務官に対する質問てん末書(同右)

一、押収にかかる総勘定元帳(昭和三九年一〇月ないし昭和四〇年九月)二冊(昭和四五年押第二〇六号の一)、同(昭和四〇年一〇月ないし昭和四一年一月)一冊(同号の二)、同(昭和四一年二月ないし同年九月)一綴(同号の三)、同(昭和四一年一〇月ないし昭和四二年九月)二綴(同号の四、および五)、同(昭和四二年一〇月ないし昭和四三年九月)一綴(同号の六)、元帳(昭和四一年二月ないし昭和四三年九月)三綴(同号の七)、仕入帳七綴(同号の八)、経費明細帳五綴(同号の九)、昭和四〇年給与台帳一綴(同号の一〇)、諸払経費支払請求書、領収書綴(昭和四一年四月ないし同年九月)一四綴(同号の一一)、同(昭和四一年一〇月ないし昭和四二年三月)一二綴(同号の一二)、木材請求書、受領書綴(昭和四二年一〇月ないし昭和四三年九月)一六綴(同号の一三)、同(昭和四一年二月ないし昭和四二年七月)一四綴(同号の一四)、外注加工関係請求書、受領書綴(昭和四一年二月ないし昭和四二年八月)六綴(同号の一五)、昭和四一年二月請求書、領収書一綴(同号の一六)、雑書一綴(同号の一七)、外注加工関係請求書、受領書綴(昭和四二年一〇月一日ないし昭和四三年九月三〇日)一二綴(同号の一八)、木材発注控簿(メモ四枚含む)一冊(同号の一九)、雑書綴(昭和四二年一〇月一日ないし昭和四三年九月三〇日)一綴(同号の二〇)、在庫調書綴三綴(同号の二二)、買掛帳(昭和四〇年一月ないし昭和四四年一月)五綴(同号の二五)、売掛帳(昭和四〇年一月ないし昭和四四年一月)五綴(同号の二六)、使用済小切手三〇枚、手形一枚(同号の二八)、使用済約束手形二二枚(同号の二九)、使用済小切手七枚(同号の三〇)、使用済約束手形二枚(同号の三一)

三、法令の適用

判示第一ないし第三の各所為につき

法人税法一五九条一項、被告会社についてはさらに同法一六四条一項

刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額以下の金額の範囲内で、被告人永安については各所定刑中懲役刑を選択したうえ、同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の各範囲内で、被告会社を罰金五〇〇万円、被告人永安を懲役五月に処し、同被告人に対し、刑法二五条一項を適用

(裁判官 八木直道)

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